発言あり
科学者は公害と闘う力とはなれない—「森永ヒ素ミルク中毒事件」(本誌2月号)に思う
宇井 純
1
1東京大学都市工学
pp.289
発行日 1971年5月15日
Published Date 1971/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204259
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公害と科学者の役割について,ここに書かれたことには全く賛成である.医学的認識が19世紀の急性中毒症状の水準にとどまっていること,学閥や行政や企業などの体制を維持しようとする社会的な力に左右されることは,公害のケースワークをやっている私も日日感ずるところである.
しかし,ここではもっと大きな困難を指摘しなければならない.公害には専門家はないのである.専門分化の一方に走りつづけた現在の科学は,自然科学であれ,社会科学であれ,公害をごく部分的にしかとらえられないことをいつも痛感する,専門家は新しい問題に対して,いつも断片的な知識と対策しか用意できなくなってしまっている.
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