厚生だより
鉛による大気汚染の防止対策について—牛込柳町鉛害事件と関連して
T. H
pp.573
発行日 1970年9月15日
Published Date 1970/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204142
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自動車時代の到来とともに,自動車排出ガス中に含まれている「鉛」で,環境大気の汚染がおこり,やがては人体にも悪影響を与えるのではないかということは,大気汚染の原因となっている浮遊粉じんに含まれている金属,例えば,マンガン,クロムなどとともに,関係者の間では十分予測されていた.厚生省はじめ各関係機関では,その防止対策を進めるうえで必要な各種の調査研究を進めてきた.
そこへ降ってわいたのが東京都新宿区牛込柳町の鉛害事件であった.この事件は,東京都文京医療生活協同組合医師団が牛込柳町交差点周辺の住民62名の健康診断を行なったところ,そのうち13名は鉛関係作業従事者が,鉛中毒者として業務上の疾病としての認定基準のひとつすなわち血中鉛量が60μg/dl以上あったことなどの成績を新聞記者団に発表し,自動車排出ガス中の鉛をその原因としたことに端を発している.この医師団の発表は,各方面に大きな衝撃を与えるとともに,マスコミのキャンペーンとあいまって,鉛害防止対策を早急に強力に推進することが現下の急務であるというふんいきが広く醸成されてきた.
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