特集 60年代から70年代へ
伝染病対策
金子 義徳
1
1東邦大学・公衆衛生学教室
pp.402-405
発行日 1970年7月15日
Published Date 1970/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204103
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伝染病予防の1960年は北海道におけるポリオの流行にはじまったといっても過言ではない.60年8月にポリオ予防接種緊急措置要綱を行政措置として閣議決定したのにはじまり,1961年3月ポリオワクチンが定期接種とされ,同じ頃発生した九州のポリオ流行に対しても防疫対策本部が設けられた.1961年6月21日厚生大臣が談話を発表し,大臣の責任においてセービンワクチンの投与が開始された.いうまでもなく今日といえどもポリワクチンに関しては流行予測事業などを通じて研究活動はつづけられているわけであるが,極端な表現をすれば,ポリオをめぐる治療医学的諸問題は一挙に解決したともいえる.感受性者対策が疾病対策として第一義的意義を有することを証明したものであった.このことは伝染病予防対策における予防接種の役割を過大に評価する傾向さえ生んだが,しかし伝染病予防対策は伝染病予防法の骨子とする感染源対策,伝播経路対策とならんで感受性者対策も防疫対策として大きな役割をもつことをあらためて認識させた点において特記すべきできごとであった.しかし一方においては,伝染病予防対策は各論の時代に入り,これがやがてはポリオワクチンとは逆に,腸パラワクチン定期接種の廃止にまで発展したと考えたい.すなわち1960年代は伝染病予防の各論の10年であり,その成果が目下大臣の諮問をうけている伝染病予防法改正の背景をなしていくことを期待する.
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