資料
ある検病調査から
小川 和栄
1
1東京都本郷保健所予防課
pp.366-369
発行日 1970年6月15日
Published Date 1970/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204094
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1957年から1958年にわたり東京都本郷において腸チフス流行の発生があった.B2型チフス菌による患者の多発で,当時ある豆腐屋の行商が原因とされ,流行例として疫学的に注目する所があった.その流行はやがて終息したものと思われたが,1965年および1968年から1969年に,再三若干の患者が同地区に発生するに至った.調査をしてみるとやはりB2型の流行である.必然的帰結として例の豆腐屋の保菌者が問題になった.
本郷保健所を中心にして周囲の疫学調査がなされた.行政とは非情なものである.その防疫上の目的に邁進し,あるいは,科学的興味にひかれて種々その私事を暴露する.その行為が善意であろうとなかろうと,ある種の私事の暴露は当事者に迷惑を及ぼすことはなはだしい場合がある.しかも,その非情な行為を行なうのもまた人間である.
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