特集 伝染病予防
地域防疫対策の再検討
斎藤 誠
1
1東京都衛生局防疫課
pp.215-218
発行日 1968年7月15日
Published Date 1968/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203704
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はじめに
社会構造の複雑化と都市の過密化は,伝染病の潜在化を促進させると同時に,他の一面では流行の増幅を容易にしている,この相反した現象の上にたって,施策が実施されるが,現実には地域特異性に適合していないことも少なくない。
地域防疫対策の対象は特定の疾患に限定されるものでないが,日本脳炎のように疾病が重篤であるため発生の把握が比較的容易で,人から人への伝染を考慮することなく,その主眼が予防接種による感受性対策におかれるものや,ジフテリア,ポリオのように感受性対策を重点とし,日脳と同様に地域内住民の予防接種率や,抗体保有状況によって,ある程度,流行予測が可能なものは特別である。それでは地域防疫対策の上で最も問題となるのは,赤痢,腸チフスなどの消化器系の伝染病であろう。なかでも赤痢は臨床診断の限界を越える軽症例の増加によって,感染源が潜在化している現況と,経路対策に欠くことのできない施設の普及が地域によっては早急に望めない状態を考慮すると,地域社会の病像を集団的に把握し,その対策を再検討する要があろう。そこで例を赤痢に求めて,地域防疫に対する考え方を,平常時と流行時にわけて考えてみたいと思う。
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