厚生だより
日本脳炎の防疫対策
T
pp.485
発行日 1967年8月15日
Published Date 1967/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203518
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梅雨襲来とともに,今年も日本脳炎の流行期がやってきた。全国的に大まかではあるが,届出患者の年次的発生傾向のみならず,きめの細かい東北,関東地方のウイルス血清学的確認患者の年次発生傾向からみて,今年は流行年に当るというわけで,本年頭初の衛生主管部長会議,さらに重ねて防疫主管課長会議の席上で,その旨披露されるとともに厳重な防疫対策を実施するよう指示された。それを裏書きするかのように6月末日までに厚生省防疫課に入った都道府県からの報告によると,届出患者数はすでに60名を越え,昨年同期に比べ2倍以上という早いペースを示している。加えて憂慮される徴候として,6月6日長崎県でコガタアカイエカからウイルスを分離したが,これは昨年に比べ2週間早い。また豚のHI抗体陽性率をみると6月下旬,鹿児島,宮崎などで抗体価の高い豚がかなり発見され,これも例年より1週間は早い。ちなみに昨年の患者数は2,301人で,戦後では中ぐらいの流行であった。蚊の発生状況では,九州各地はカラカラの梅雨のせいか若干少ないが,宮城は例年に比べて多く,39年の流行年と同様の傾向とのことで,関係者を心配させている。
日本脳炎の致命率は30%,事故率は60%と高く,後遺症も四肢のまひ,言語障害,白痴などと悲惨さは言語を絶するものである。加えて対症療法以外は著効を示す治療法もないので,予防対策に期待するところ大である。
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