講座 疫学・3
疫学調査のポイント
平山 雄
1
1国立がんセンター疫学部
pp.274-277
発行日 1968年6月15日
Published Date 1968/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203692
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
疫学調査の講義は一応きいた,その方法とか定義について教科書を読んだ,そのような経験を持つ者がさて実際に集団発生に際会し,あるいは異常流行とあい対して疫学調査を行なおうとする段になると,何をくらべていいか分らない。試みてはみるけれどもさっぱり自信が持てないという経験を持たれた方は少なくなくないと思う。なんといっても場数をふむことが必要だということもある点では正しいわけだが,しかしそれ以上に重要なポイントがあると考える。そのポイントとは何かということを説明するのだが,私は一言にしていえば,仮説を立ててそれを軸にして疫学調査を展開することだと思う。そうい立場と一方仮説を持たないでただ莫然と調査をつづけていく立場のいずれをとるかが,確実な足どりで求心的に結論に近づく調査にするか,どこまで調べをつづけてもまとまりのつかないものにするかの分れ目になるのではないかと考える。
私自身過去に行なってきたかずかずの疫学調査をふりかえってみて,ある時には非常に自信をもってスムーズに調査を行なうことができたと感じ,ある時には非常にヨタヨタともたつきながら調査が進行していったということなど回顧するのであるが,反省的に整理してみると,やはり最初から方針をキチンとたててのぞんだかどうかということが,その決定的な要因になっていたと思われる。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.