特集 住宅と健康
第8回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題報告Ⅰ
都市居住者の住生活と健康
報告6.不良住宅地区改良住宅における住生活
広原 盛明
1
1京大工学部建築学教室
pp.634-635
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203565
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住居と健康
1.住居と健康
住居の条件として一般には,①安全性,②保健性,③機能性,④快適性といったことが重要視されている。住居は自然の脅威から人間の生命を守る安全なシエルターであり,その生命を健康な状態で維持しつづけるために衛生的でなければならず,また住み手の日常生活上のさまざまな要求に機能的に対応し,かつそこに精神的な安定を見出せるような生活の容器・ハコであることが求められるからである。
住居の問題を今まで主として取り扱ってきた建築学(住宅計画学),家政学(住居学)の分野では,健康に関しては住居の保健性という側面から,湿気,通風,日照,防虫などの研究が行なわれてきたが,住居研究の中心は,住居の機能性・快適性の追求にあった。このことは,医学的立場からみれば,一見住居の研究が健康と無関係であるようにも受けとれるが,健康の概念を人間の良好な精神的・肉体的状態というように理解すれば,住居の機能性,快適性もまたきわめて健康と深い関係にあることがわかる。機能性とは生活に便利ということであるが,それはたとえば,農家の台所改善によって,広くて不衛生な台所が能率的で動きやすい台所に変わった結果,主婦の労働量を大幅に軽減し,疲労を小さくするというような,健康管理の役割を果たしている。
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