人とことば
「専門的近視眼」について
M・バーンズ
Merrie Burns
pp.373
発行日 1967年7月15日
Published Date 1967/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203484
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私は,社会福祉における活気のなさと,生き生きしたリーダーシップの欠如について種々の云い訳けのうちで,最も途方もないと思うものについて,最後に述べようと思う。それは,40年前にくらべて今日は,大さわぎをしなくてはならないような具体的な問題がないのだという議論である。毎日の新聞を読み,われわれの住んでいる周囲を見まわすとき,そこにあるのは,何とかされなくてはならない問題ばかりだといってもいい時に,「問題がない」とは一体何事であろう!われわれは,わが国の生産向上にすっかり満足してしまって(もちろん,それが多くの社会福祉政策にまさって人々の福祉のために貢献していることは解るけれども),この生活水準の向上からとり残されている人々の存在が,眼に入らないというのだろうか。年額1,000ドル以下の現金収入しか持たない400万世帯,また450万人が,積極的なソシャル・アクションを必要とする社会問題でないというのか。低収入,しばしば堪え難いほどの生活条件,労働条件,そして不安定な社会的地位(自分自身も,また家族も),という問題になやむ幾十万の移民は,われわれの関心事でないというのか。人種の故に差別され,就職の機会や教育機関,適当な住居等を平等に与えられていない幾百万の仲間が,わが国の良心にとって,大きな恥辱でないというのか。
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