特集 市町村の保健行政を分析する
へき地の医療と公衆衛生—編集室ルポ
東京のへき地をゆく—桧原村の保健衛生事情
景山
pp.578-582
発行日 1966年10月15日
Published Date 1966/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203357
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美しい自然に囲まれて
東京都の最西端,東京のチベットといわれるところに桧原村がある。西は秩父多摩国立公園に属し,1,500メートルぐらいの山々を隔てて山梨県に接している。立川市から電車で30分の五日市市からさらに車で20分ほど,尾根づたいにうねうねと走るとようやく桧原村の入口である。周囲は村名のようにひのき,杉の山村に囲まれ緑が美しし。舗装された道路は,奥深い山を切ってどこまでも続くかと見えるが,30〜40分もはいった小岩部落でプツンと切れている。
珍らしいことだが,桧原村は明治以来一度も町村合併されていない。人口約5,700人,世帯数1,128,総面積は10,491km2という東京都区部の大田,世田谷両区を合わせたほどの広さである。村全体の93%が山林で占められ,田畑はわずかに2.7km2・2.5%だけで,村の経済生活にとって山林の占める役割は非常に大きい。このような広大な土地に人は散家形態をとってすみ,人口密度は54人(1km2あたり)と非常に少ない。東京都平均が5,385人というから100分の1にしかあたらない。人口構成で特徴としてあげられるのは,最近の農山村に共通な現象ではあるが,老年人口の占める割合が高いことである。その数は約540人・9.5%もあり,全国平均の6.2%をはるかに上回っている。
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