ニュースの焦点
救急医療の問題点—日赤中央病院の例から考えて
森本 忠良
1,2
1東京都五日市保健所
2元東京都衛生局医務課
pp.470-471
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203331
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電車に乗っても,街へ出ても,さらには,美しい自然の山を歩いても,不愉快な事にぶつかることの多いこの頃である。眉をひそめ--いろいろの程度はあるが--たくなるものから,自分が何か直接,間接にそれに関連をもっているだけにどうにもやりきれなくなるものまでさまざまである。世の中が何か狂っているような気がするのは,些細なことを余り気にしすぎるせいでもないと思うのだが。例の腸チフス事件から予防接種の過誤,さらに日赤産院に至る一連の事件など,それぞれ本質的に異なる事件ではあっても,"医"についての世間一般の見方がきびしくなり,報導関係もセンセイショナルな見出しで報導している矢先,6月17日の各紙は,一せいに日赤中央病院での救急患者の処置について,満員という理由でタライ廻しの結果70才の婦人が死亡したと大きく報導した。またか,との一語につきる。"医"に携わるものとして何ともやりきれない気持である。"医"のモラルの問題だからである。
消防法が改正されて救急業務の定義づけがなされ,それをうけて厚生省令で救急病院の基準が示された。一応法体系は整ったかにみえるが,実情はさっぱり法の精神通りには動いていない。元来救急でない患者はないはずである。しかし,その中でも特に緊急を要するもの--その判断は誰がするかという問題はあるが--について,従来,消防庁がサービス業務として救急車をもち,指定病院へ搬送していたものである。
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