連載講座 公害・8
発生状況
橋本 道夫
1
1厚生省環境衛生局公害課
pp.90-92
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203195
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はじめに
公害の発生状況を適確に客観的に把握することはきわめて難しい問題である。通常地方自治体によせられた苦情統計を中心として論ずることが多いが,これは被害者が意識して,役所に苦情を持ち込んで来た場合のものであって,その持ちこまれる窓口がきわめてさまざまであり,あるものは保健所に,あるものは警察に,あるものは市町村役場に,あるものは都道府県の公害行政部局によせられたものであるが,これらの苦情が必ずしも系統的に1カ所にまとめられて整理されているとはかぎらない。もちろん都道府県で公害課のように公害に専念する行政部門を確立している場合はかなり系統的に整理されているものであるが,この場合でも未だ完全に全容をつかみ得るとはいえない。また苦情が申し出られなくても公害が厳として存在することも事実であり苦情統計に挙ってくるものはその害が感覚的に著しく辛棒の出来ないような性質のものであるか,または利害関係からみて放っておけないようなものであろう。
現在われわれが公害の実態をどのように把握するかというと,一つは苦情の届出であり,今一つは環境汚染の観察や測定であり,更に今一つの重要な把握のルートはマスコミによる報道である。このいずれのルートも客観的にみて完全な公害の実態の把握手段とはいい得ないが,公害の問題の存在を知るのには各々の特性をもった把握方法である。
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