特集 精神衛生
精神衛生の課題と対策
麻薬・アルコール等の薬物中毒と精神衛生—その課題と対策
樋口 幸吉
1
1東京大学脳研究所
pp.169-174
発行日 1965年3月15日
Published Date 1965/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203014
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麻薬・覚醒剤・アルコールなどはそれぞれ特有の作用をもつ医薬品で,これを適量に用いると,人の気分を爽快にし,苦痛を除き,あるいは能率を増進するなどの心理的効果を有している。しかしながら,一方では習慣作用があって,連用すると次第に用量がまし,自分の意志では中止のできなくなる状態,すなわち嗜癖に陥り,しばしば慢性中毒症状を呈するようになる。そのため,それぞれ特有の中毒による人格変化をきたし,時には重篤な精神病の症状を呈するものである。
このような薬物の乱用ないし嗜癖は,しばしばその周囲の人々にも不幸を及ぼし,家庭を破壊し社会に種々の害毒を流すことから,その取扱いには種々の法的組制がなされてきた。したがって,これらの薬物の使用の結果,中毒の状態で非行や犯罪に陥る者もあれば,使用そのものが犯罪となる場合もある。したがって,これらの薬物中毒の問題は,薬物の個体における薬理的効果や,中毒による健康の障害ばかりではなく,社会の悪徳や犯罪などとも結びついている。
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