地域活動の中から 保健所と大学をむすぶ新しいきづな
地域社会と遊離した公衆衛生学はありえない—山口大学の試み
野瀬 善勝
1
1山口大学公衆衛生学
pp.544-545
発行日 1964年10月15日
Published Date 1964/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202896
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わが国の保健所活動には地域差があって,所長に人を得ている保健所は活溌であるが,そうでないところは低調である。また,医科大学のない県や,医科大学はあっても大学とむすびついていない県では,保健所活動が概して低調である。保健所活動を活溌ならしめるためには必ずしも大学とむすびつく必要はないが,数年ないし10年の長きにわたって保健所活動を活溌ならしめようとすれば,やはり大学とむすびつくことが医師の補給という点から考えてみただけでも好都合であるが医師以外の技術職員の再教育のためにも大学とむすびつくべきである。
私は過去において,大学教授と保健所長を6カ年間(昭和29〜34年)併任したが、今日になって考えてみると,業績として残っているものは何もない。しかし,6カ年間にわたって短かきは2〜3年,長きは6カ年,私といっしょに保健所活動に従事した医師,保健婦,栄養士,食監,環監などの技術職員の数はかぞえきれないほど多く,しかも現在,衛生部や保健所の中核となって,地域社会の公衆衛生活動の推進力となっている者の大半が,上述の技術職員であることは,私の大きな喜こびである。彼らといろいろな会議や行事,または講演会や学会などであうたびに,お互いに懐古談にふけって,私から叱られたことが話題になる。こんなにたくさんの人を叱っていたかと思うほど叱られた話ばかりである。昔に変らず現在も熱心にやっている職員ほど昔をしのんで話題に花が咲く。
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