綜説
最近の日本における腸チフス発生屈出の著明な減少に対する原因的考察—終戦前後のパラA流行の潜在と,その後におきた腸チフスに対する感受性の変化ならびに患者発見能力の指標としての腸,パラ比と日本の地位
佐藤 徳郎
1,2
,
湯浅 秀
3
1国立公衆衛生院栄養生化学部
2日本大学医学部衛生学教室
3国立公衆衛生院疫学部
pp.177-192
発行日 1963年4月15日
Published Date 1963/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202649
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終戦後の日本の腸チフス,パラチフスの減少は非常に著明である。その原因はいろいろの条件があげられるが,定説が見当らない。著者の一人は終戦前後のパラAの流行を経験し,各地に潜在した跡を認めえたので,それを中心に当時の腸チフス,パラチフスの流行の資料を整理し,腸チフス発生に対する意義を考察した。その結果まだ補強を必要とするが,国内におけるパラAの大き上な流行の存在したことが推定され,パラAに罹患したことが腸チフスに対する抵抗を強めるとすると,腸チフスの減少に対する意味づけが可能であり,この現象は年令別腸チラス,パラチフスの罹患曲線の上に明瞭に跡づけられていることがわかった。また腸チフス発生数を分母とし,それに対するパラチフス発生の比をとるとき,各国の間に非常に大きな開きがあり,その国々の医療の水準を示す一つのよい指標となることを見出した。
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