特集 災害対策
災害対策はいかにあるべきか—伊勢湾台風における日本赤十字社の救護措置
高木 武三郎
1
1日本赤十字社社会部
pp.307-312
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202282
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災害対策の最終目的は災害の絶滅にあることは申すまでもないが,これは議論としては成立するが,現実とは縁遠い議論である。災害の起る毎にやれ天災だ,やれ人災だと論ぜられるけれども,その区別判定も亦極めて困難だ。人智を尽せば防止出来るものも勿論あるが,そこには自ら限度がある。少くとも現在の人智と能力とでは如何ともなし難い天災地変の存在することは素直に認めなければならない。火山脈の上に安坐している日本はいつどこに地震が襲つて来るかも判らないが,その予知の方法すら,実際的には未だ応用できないし,年々歳々必ず,北上して来る南方洋上の低気圧にしても,これは大体の見当はつくが,これを避ける方法は発見されていない。海水の温度を少々上昇させればよいとか,原子爆弾によつて気圧の変化をなすことが可能だとか,一応科学的の説明はきかれるけれども未だ研究室の研究テーマを一歩も出ていない。とは言つても,科学の進歩は実に驚嘆に価する現状であるから,いつかは地球上に応用されることであろう。然し少くとも今日に於いてあくまで現実に直面して対策を樹てなければならない。
治水,治山,道路,建築等の事業の改善によつて災害を防止し,或は最少限度に喰い止め得る方法はいくつも残されているのであるから,この点については最善の努力が払われなければならないし,災害の起る毎に周章狼狽して,予備金の支出で後始末をつけるという愚は繰返すべきではない。
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