原著
備後灘海域における屎尿の海洋投棄と海潮流の調査について
三浦 大助
1
1厚生省環境衛生部
pp.165-172
発行日 1960年3月15日
Published Date 1960/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202258
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I.はじめに
近年本邦都市の屎尿処理問題はその窮状甚しく,農村還元の減少によつて所謂余剰屎尿が増加したために,沿岸都市においては海洋投棄処分に依存するところが多くなつた。このような海洋投棄という屎尿の処分方法も,広い海のことであるから,少量であるうちは何ら問題はないが,その量が次第に増加してくると,殊に生き物のような海潮流を相手とするものであるので,各海域で風致美観上,衛生上,また漁業上の多くの問題も惹起されるようになり,補償問題になつたこともその例2,3に止まらない。それでも相当離れた外海に投棄するのならまだしも,湾内とか内海のようなところでの投棄処分は何かと問題をおこしやすく,投棄量も多く,被害問題の最も大きかつた東京湾と相模湾,および大阪湾の場合については,既に調査が行なわれ,その経緯や対策についても日本公衆衛生雑誌第5巻第7号や国民衛生第26巻第4号の中に詳しく紹介されている。そのほか伊勢湾や玄海灘の各海域においてもまたそれぞれ名古屋市立大学の六鹿教授や九州大学の木宮氏によつて影響調査が行なわれ報告されている。
その後瀬戸内海沿岸都市においても海洋投棄が次第に増加の傾向にあり,この海域が国立公園としてだけではなく,特に広島湾から備後灘にかけては,食用貝藻類の養殖場として名高い海域であるだけに,今のうちに早急に検討しておく必要に迫られてきた。
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