医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・4
医学生に対する疫学及び疾病予防の教育
金光 正次
1
1札幌医科大学
pp.507-509
発行日 1959年8月15日
Published Date 1959/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202174
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どの学問でも同じ様にいえる事と思うが,医学生に疫学を講義するに当つて私は常にこの学問が医学の中に占める位置と,その役割の意義を理解させる事に努めている。これを特に強調する理由は,現在の医学界には疫学が依然として疾病の発生消長を現象論的に研究する学問にすぎないという古い思想が未だに残つており,これを拭い去るには学生の時に新しい疫学の概念を植えつける事が最も有効と考えるからである。私は冒頭から疫学をMedical ecologyと定義して教えている。従つて講義は生態学総論から始むべきであるが,時間の関係もあるのでその中特に生態学的な物の見方と考え方を理解させる事を重点にして話す。これにはOdum:生態学の基礎(朝倉書店),八木,野村:生態学概説(養賢堂),沼田:生態学方法論(古今書院)等が参考になる。ただしこれらの本の内容は殆んどが動植物を対象にしたものであるから,それを医学の問題におき代えて説明しないと学生は退屈する。こうすると疫学で重視される集団現象は群生態学の現象となり,また個人の医学的現象は現在では疫学よりもむしろ社会医学の面で取扱われているが,これは個生態学の問題にまとめられる。従つて疫学の3大要因即ち病因,宿主,環境はそのまま生態学的要因となり所謂疫学現象は各要因で構成された生態系の動的平衡状態即ち生態遷移と理解させる。
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