特集 高血圧の疫学
公衆衛生と高血圧
吉岡 博人
1
1東京女子医科大学
pp.113-114
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202091
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昨年10月9日に「疫学研究会」の一つの試みとして「高血圧の疫学」がとりあげられた。昨年4月,熊本における「日本衛生学会」のシンポジウムとしても,「高血圧の疫学」が主題となつた。また同じく10月の福岡における「日本公衆衛生学会」の「自由集会」にも「高血圧」がとりあげられた。また私の関係している「東京女子医科大学学会」の10月の総会にもシンポジウムとしてやはり「高血圧」が主題として討議された。そしてどういう因縁か,私がいつでもその司会者の役を仰せつかることになつたが,はなはだ奇妙な廻り合わせという外はない。こういう風に,公衆衛生の主要テーマとして「高血圧」がとりあげられるようになつたのは,一体いかなる意味であろうか。なぜ,ブームのように,こういうテーマがとりあげられるのであろうか。しばらく,この問題について考察を加えてみたいとおもう。
公衆衛生の研究対象が,過去においてもつぱら急性伝染病,ことに病原体の発見のごときに主力をそそいでいたことは,読者のよくしつておられるところである。そして,臨床医学が「稀有なる一例」を研究することが,その主要なる任務であつたように,衛生学もとかくそれほど社会的には患者の頻度が多くなくとも,未発見の病原体に対し,プリオリテートを争うようなことが,それら学者の誇りとしたような時代があつた。ことにドイツ流の衛生学がその歴史的因縁から細菌学との区別が明瞭でないために,衛生学すなわち細菌学のような観を呈した。
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