特集 保健所管理
綜説
行政管理の動向
岡部 史郎
1
1行政管理庁行政管理局
pp.8-11
発行日 1959年1月15日
Published Date 1959/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202066
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Ⅰ.
1.フランスの文明批評家シーグフリードが,現代を「管理時代」と規定したことは,すでに有名であるが,わが国の行政に管理という概念が導入されたのは最近のことであると言つてよい。従つて,行政管理という概念も,技術も今後の発達にまつところが大きい。
2.従来のわが国の行政の特質は,天皇の統治権の発動形態として権威主義又は権力主義の色彩の濃いことであつた。近代国家としてのわが国の行政は,この権威主義に法治主義の衣を着せたものであつた。行政官の権威は,法令の執行という形で現れた。ここに,官吏制度は,法科万能ということにならざるを得なかつた。官吏の養成における東大法学部と高等文官試験制度の役割を思い合されたい。そこには,権力と法律技術との密接な結合があり,従つて,行政官としての事務官の優越性が生れた。しかし事務官の優越性は,行政事務の尊重を意味するものではない。むしろ,法律万能のかげに,事務や技術の軽視が宿るのである。支配の道具としての法規の論理は尊重されるが,法規の基盤である行政事実や法規の実現する過程である行政事務は,一段価値の低いものとして取り扱われたのである。従つて,行政事実の認識・調査や行政事務の処理について,その合理的な取扱いとか能率とかいうことには,余り考え及ばなかつたといえるのである。行政は,法規の権威の執行であると考えられたのであるから,おのずから,そこには,重々しい形式と慣例の尊重が生れた。
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