原著
脳卒中についての公衆衛生学的問題点
佐々木 直亮
1
,
武田 壤壽
1
1弘前大学医学部衛生学教室
pp.556-561
発行日 1958年10月15日
Published Date 1958/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202037
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昭和26年から結核が国民死亡の首位を脳卒中にゆずつて以来,脳卒中による死亡は第1位をしめ,最近では年間約13万人の死亡者があることが人口動態統計からうかがわれ,今後益々その数は増加するであろうことが考えられている。このように国民死亡の第1位が脳卒中による死亡であり,その死亡による絶対数が年々増加の傾向にあることが,結核や赤痢などによる死亡と同様な見方で,公衆衛生学的な問題となり得るであろうか。
この死亡の傾向を表わすものが基礎人口全体に対する割合を示す粗死亡率であり,粗死亡率の大小が脳卒中による死亡の重要性の大小をすぐ語るとはいえない。これは日本と諸外国との比較のとき問題になる点であるが,老人人口のしめる比率の多い国では,粗死亡率は大きく出,粗死亡率だけの比較では,わが国は比較的低率な国に入るが,年令訂正死亡率で比較するならば,わが国は世界で有数な脳卒中による死亡の多い国であることがわかるという例からもわかる。これは脳卒中による死亡が年令が増加するにつれて,30才代からほぼ幾何級数的にその危険率が上昇するという特長があるからなのである。勿論各国間の比較ではこの年令的に危険率が上昇する傾向にも,国によつて多少の相違のあることは将来研究問題となろう。
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