隨想
厚生省創設当時の思い出
藤原 九十郎
1
1厚生省近畿医務出張所
pp.531
発行日 1958年10月15日
Published Date 1958/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202027
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昭和13年内務省の衛生,社会の両局を中核として厚生省が創設された。当時既に衛生局は設置後64年,社会局また18年を経過し,国勢の発展と国民生活の向上に伴い,厚生行政の範囲,内容共に広汎多岐であつたので,一省を新設して施策の徹底と能率の向上を図るべしとする与論が成功したわけである。然しながら今から考えると省の創設はその後に展開された大戦遂行上の必須要件でもあつた。
即ち昭和6年に満州事変,12年に日支戦争が始り,真に国家非常時に際会した時代に於て,最も必要な人的資源の急速なる確保のため,厚生行政の強力にして適切なる施策が要求された事は云うまでもない。従つて省の創設に軍部の推進が大いに与かつた事は勿論で,特に陸軍省医務局長の職にあつた小泉親彦博士が強力なスポンサーであつた事,並びに彼が後には厚生大臣として戦時行政に挺身された事は共に忘れ得ぬ存在である。
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