隨想
厚生省創設20周年を迎え
広瀨 孝六郎
1
1東京大学工学部
pp.517
発行日 1958年10月15日
Published Date 1958/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202022
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今から20年前というと丁度昭和13年になるが,当時は恰かも公衆衛生院の創立直後で,筆者も兼任乍ら同院衛生工学部の創設に大童であつた事を想起する。併し厚生省の創設には直接携わつておらず,公衆衛生院の創立時代を記しても些かピント外れの感があるので,厚生省創設当時の回想は他の適任者にゆずつてその後の厚生省の歩みと将来とに就いて感想希望を書き記して見度い。
一体厚生行政の重点が何処にあるのか又一点でなく多方面に亘るのか,その辺は筆者は詳かにしていないが,予防衛生というか公衆衛生というか病気にかからせない様に,更に進んでは快適な生活を営ませるという事が,少くとも厚生行政の目的の一つである事は間違ないであろう。そうするとすぐ問題になるのが社会衛生というか貧富の差という様な事,続いては労働衛生即労働者の保健衛生や災害防止の件であろう。此2の問題は実は国家社会の根本にふれる問題であつて,今二大政党が争つている政策にもふれなければならない。こうなつて来ると筆者の様な科学技術を専攻している者には手に負えなくなつて来る。併し以上と関連する国民体位向上の問題としては,食品の栄養という事が重大要素となる。戦後,米過食の害が叫ばれているが,折角戦争中に築かれた良習慣であるパン食メン類食が正に崩壊しようとしている。年々の米の豊作は更に之に拍車をかける状態にある。
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