特集 大阪の公衆衛生活動
活動報告—どのように仕事にとりくんでいるか
Ⅳ.医師会と保健所
大阪府医師会の公衆衛生活動
古林 兆一
1
1大阪府医師会
pp.433-434
発行日 1958年8月15日
Published Date 1958/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202001
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府医師会は勿論各地区医師会に於ても年度の事業計画に「公衆衛生の向上に関する件」なる項目が年々掲げられているが,特に実際的な活動が進められることもなくうとんじられたままで経過して来た。予防医学そのものの発達が我が国に於ては極く最近のものであり,戦後行政的にも保健所がやつとその軌道に乗り,又学問的にも初めて公衆衛生学が独立するなどその歴史は浅い。いわんや街の開業医に於ては日夜多忙な,悪くいえば馬車馬的な保険診療に追われている昨今であるためその余力を予防医学に注ぐということは求める方が無理なように思われて来た。求めても無理であろうと想像した誤つた観測と,予防医学への熱情の不足とが知らず知らずの間に医師会の公衆衛生活動の向上を阻み,低調な活動状態が常態であると見なされたまま何等の反省も不思議な程起らなかつた訳である。一寸反省する暇さえあれば府,市衛生当局,保健所という行政当局のみによる公衆衛生活動が如何に跛行的であるかが気付かれねばならない筈であつた。「予防は治療に優る」という言葉は医者のみならず一般巷間に於ても容易に理解されうる一句でありながら,その実行運動は甚だ難しいものとして取り上げられなかつた。
私は,崩壊への一途を辿る開業医の惨状を救うものは唯一つ,臨床医としての公衆衛生的協力―予防医学の活用あるのみと信じている。「見よ惨憺たる開業医の現状よ。目覚めよ開業医諸君!予防医学的活動への協力を」と叫びたい。
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