特集 健康の疫学
巻頭言
「健康の疫学」について
野辺地 慶三
1
1疫学研究会
pp.233
発行日 1958年5月15日
Published Date 1958/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201958
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わが疫学研究会は,その前身である疫学集談会の時代より通算して,既に70回に及ぶ研究会を開催している。この間に取上げられた討議課題は誠に多種多様であり,わが国における疫学研究の流れの一面を示しているものといつてよい。これらの課題は,例えば総論的なものとしては,疫学の使命から,血清疫学,理論疫学,疫学調査方法等に至る迄,又各論的なものとしては,急性,慢性の伝染病から,食中毒,非伝染性疾患等に至る迄を含んでいる。疫学の重要性に対する認識の向上が,このような巾の広い研究領域を斉らしたものといい得るのである。
昭和32年1月29日,公衆衛生院において開催された第68回疫学研究会が討議の主題とした「健康の疫学」は,疫学の分野で今後開拓さるべき領域を示すものとして意義が深い。このことが,従来の「疾病の疫学」の比重が軽くなつたことを意味しないことは勿論であるが,「疾病の疫学」に「健康の疫学」が加わつて,はじめて集団の健康問題を研究対象とする真の疫学が完成されることは,当日の演者も述べている通りである。
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