特集 公衆衛生と社会保障
綜説
生活館長の見た公衆衛生
塚本 哲
1
1都立新宿生活館
pp.19-22
発行日 1958年1月15日
Published Date 1958/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201918
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(Ⅰ)
公衆衛生という課題について直接この仕事に関係をもたない私に意見を求められたのであるが,公衆衛生ということは公衆道徳にも重大な関係をもち,教育的な一つのムーブメントととも心得ているので,日頃からいいたいこと,希望したいことが一ぱいあるような気がしていた。しかしいざ書こうとしてみるとどうも抽象的にばかりなつてピントがぼやけるのである。これが素人のかなしさというものであろうか。
だが考えてみると公衆衛生の活動ということは私の従事しているCommunity Centerの仕事にも極めて重要な関係をもつものである。そこで私の立場を一応申上げておくことをお許し願いたい。今日Community CenterとかNeighborhood Houseとかいわれている仕事は,もとはSettlment運動に源流を発するもので,英国における初期の活動は例の有名なToynbee Arnoldを中心とする大学拡張運動であり,オツクスホード大学の名門の子弟が貧民窟に住居して近隣を教化誘導する『知識的殖民』であつた。したがつて学生のヒユーマニテイと知識とによつてスラムの民衆を一人でも多く引上げようとする上下運動であつた。
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