特集 學校保健衛生(2)
へき地の学校保健対策について
杉浦 守邦
1
1山形県教育委員会学校保健課
pp.52-55
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201672
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1.まえがき
1年の3分の1乃至4分の1近くを雪にとざされ全く交通のとぜつするへき地にある学校の保健状態は想像も出来ないものである。教師は3カ月分の俸給をもつて山に入り,電灯もなくたださえ暗い所へ雪がこいをして更に陰欝な教室で,児童と3カ月間全く文化と隔離した生活を送つている。文化の恵まれない所は医療にも恵まれない。学校の児童生従がけがをし或いは高熱にたおれたとしても,神がかりな祈祷か富山の薬売りのかつおいていつた売薬しか頼るものとてない。重症となつて手に負えなくなつたとき,そりによつて夏往復した道とは全くちがつた尾根の道を半日もかて運ばれていかなければならない。
このような環境にあつては生命はややもすれば軽視される。そして向上心は麻痺して安易な宿命観に陥るところとなる。貧困が更に人を卑屈にし現状の改革は非協力という抵抗で前進しない―教育に対しても,保健に関しても関心は至つてうすい。
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