特集 公衆衞生と経済
労働災害の経済的損失について
加藤 新
1
1労働省労災補償課
pp.42-44
発行日 1955年12月15日
Published Date 1955/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201627
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はじめに
わが国において労働によつておこる災害--業務上の負傷,疾病,癈疾,又は死亡の実数は正確にはわからないが,例えば労働基準法の適用事業場からの報告に基いた統計によれば,昭和29年中に全産業(鉱業を除く)で死亡した者は4,637名,休業8日以上の負傷者は290,596名で,業務上の疾病にかかつた者は(鉱業を含む)20,295名であり,また労災保険の補償費給付の対象となつた災害者数は,昭和29年度(昭和29年4月〜昭和30年3月)中,全産業で576,628名となつている。しかも,これらの統計に含まれない災害者を考え合せると,わが国においては毎年60万人以上の人が労働災害によつて負傷したり,疾病にかかつたり,死亡したりしているということになろう。そして,この数字は昭和12年から16年までの日華事変の戦死傷者51万余名をはるかに越え,また,大平洋戦争の戦死傷者186万余名の1年平均53万余名をも越えるという驚くべき数字である。
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