特集 公衆衞生と経済
疾病別医療費
伊藤 信義
1
1奈良女子大学
pp.15-26
発行日 1955年12月15日
Published Date 1955/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201624
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I.まえがき
疾病が貧困の最大の原因であることはすでに公認の原理であつて,医療費は一個人が一時に負担し得る能力を超えることがしばしばである。従つて,医療費が国民経済において占める位置について論ずる場合,疾病別の医療費を明らかにすることは重要なことであり,これとともに疾病率が明らかにできるなら,それは医療財政ないし疾病予防対策上の基礎資料となるのみでなく,医師にとつてはまた医業合理化の参考ともなるであろう。
元来,疾病率は衞生状況・年令・職業・貧富の差等によつて異り,また受診率は衞生知識の程度・医療施設の分布と交通の状況等によつて相違するものである。一方診療の傾向(質と量)従つて,これに伴う医療費は疾病率・受診率と関連し,かつ疾病の軽重の差・患者の医療に対する認識の差・経済的負担能力とともに,診療を担当する側の人的・物的諸条件の差異等によつて異つてくるものとみられる。
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