特集 傳染病問題の焦点
日本に於けるリツケッチオージス
川村 明義
1
1東京大学傳染病研究所 第5研究室
pp.39-42
発行日 1954年1月15日
Published Date 1954/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201321
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1.まえがき
現在世界でリケツチオージス(リケツチア性疾患)として知られているものは,発疹チフス,発疹熱,ロツキー山紅斑熱,リケツチア性痘瘡,恙虫病,Q熱,塹壕熱等であるが,この中日本には発疹熱と恙虫病が地方的に存在する外は定住性を確認されたものはない。戦争病或いは飢餓病と呼ばれる発疹チフスが御他聞にもれず我が国にも今次大戦中から終戦混乱期にかけて北方より浸入流行を極めたことは未だ吾々の記憶になまなましい。しかしこれも社会の立ち直りと共に一部靑森県北端地区に地方性に定住が疑われる以外はいつしか影をひそめてしまつた。しかし依然として北方隣接地区に濃厚有毒地を控え,それとの交通機関や社会状勢によつては媒介動物(虱)が定住している以上いつ何時再び淫浸のうき目を見ぬとも限らないし,それのみか未だかつて一度も発生を見ないQ熱,リケツチア性痘瘡でも媒介動物の存在と濃厚有毒地との貿易交通の頻繁化にともない我国に侵入し人獣を罹患させないとは云い切れない現状である。此の様な状勢を念頭におき,且つ今次大戦を契機として飛躍的進歩をとげたリケツチア学の新しい知識を整理し,リケツチオージスの対策を考えて見たいと思う。
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