特集 性病予防
綜説
日本に於ける性病対策とその將来
田波 幸男
1
1厚生省公衆衛生局防疫課
pp.177-180
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201948
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本年4月1日より売春防止法が全面的に施行されることになり,所謂赤線地域,青線地域等の存在が許されなくなるので,このためそれらの地域の業者の転業が社会的な問題となつているのは衆知の通りである。この転業は順調に進んでいるとはいえないけれども,種々の圧力によつて余儀なく進行していることは事実であろう。有名な名古屋市の中村遊廓,岐阜の金津園等は既に解散をしたということである。我が国では数百年の歴史をもつ集娼制度が売春防止法によつて崩れ去るのであるけれども,この後に来るべきものが如何なる形をとるかということは中々に予想し難い点もある。ある人は売春防止法は一つの風俗革命であるといつているし,これも事実であろうけれども,売春婦の発生が根本的には貧困に起因している限りは売春防止法のみによつて売春婦がすべて姿を消すとは考えられない。何らかの潜在した形で存在をつづけるのであろうが,その形を予想することがむずかしいのである。集娼制度がなくなるのだから散娼という形になるだろうということは確かであるが,その散娼がどういう形になるのであろうか。
我が国では男子の性病の70%は売春婦から感染するといわれている。このように性病の感染源として非常に重要な売春婦の存在形態が激変するのであるから,これに伴つて性病対策も大きな変化を受けざるを得ない。
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