特集 精神衞生
精神神経病の最近の治療
白木 博次
1
1東京大学医学部神経科
pp.3-14
発行日 1953年9月15日
Published Date 1953/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201259
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精神神経病といつても,筆者は主として精神医学を専攻しており,また紙数もゆるさぬので,精神病については筆者が手近に経験しえた疾患群のみにかぎりたい。
最近すくなくとも東大神経科外来をおとずれる精神神経病患者が激増の一途をたどりつつある事実からまずのべてみたい。第1図に示すように,終戦直後の昭和21,22年度は別としても,その後の増加率は戦前の2倍或は3倍にも達しており,しかもその数は新来患者のみについてである。これは精神神経病患者の絶対数の増加か,患者が神経科をおとずれることを躊躇しなくなつたことか,または保険制度の普及に起因するかといつた議論は別としても,諸種の精神神経病に対する治療法の進歩が大きな役割を演じていることには疑はない。しかし現在,それらの治療法は果して完全かつ理想に近いものといいうるであろうか? 答は否である。試みにわが国の精神病院の病床利用率をみれば(第1表)いまさら説明するまでもなく,病床は年次増加をみるにかかわらず,超満員の現状にあるということができる。このことは,病床の絶対数が実在の患者数に対して,問題にならぬほどすくないことにその主要な原因を求めうるとはいえ,なお治療法の不完全さにもとずく,病床廻転率の低さにより大きく起因しているといえよう。
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