論説
寄生虫問題と人屎尿
兒玉 威
pp.2
発行日 1952年9月15日
Published Date 1952/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201094
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神奈川縣の中央厚木町から西北4粁に睦合村及川といら一部落がある。山脚に近い平地で田畑略略半し,桑園が多く,相模川の支流がその東を流れている。肥料として人屎尿を他町村から移入することは全くない。作物の出來もよく村民の顏も明るい。このように普通の農村であるが,どこの家も便所が清潔で今まで見かけない構造をもつていることが目につく。即ちここは屎尿分離式便所の初の設置地區である。この新型便器を見ると,後端から2/5の所に隔壁があつて,後部の穴は便ツボに通じ,前の3/5の凹部は尿送管で尿ツボに連結している(本誌10巻1號グラビヤ參照)。これで尿の98%が屎から分離される。このような改良便所が1950年以降48戸に74個設置され,その效果が觀察されている。
尿ツボの方は1-2週で一杯になるのに屎の方は仲々溜らない。3-4ケ月に一度の汲取りでよい.尿量は屎量の10倍あるからである。尿は随時汲取られて野菜・麦等の肥料として使われる。尿を使うようになつてからの野菜の生育や麦の收量は下肥時代と變りがない。
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