原著
一屎尿消化槽における寄生虫卵の検査成績
小島 邦子
1
1国立予防衛生研究所寄生虫部
pp.55-60
発行日 1957年9月15日
Published Date 1957/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201877
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近時農村における化学肥料の普及にともなつて中小都市の屎尿の農村よりの汲取りが減少し,中小都市の屎尿を如何にすべきかということが緊急の問題となりつつある。これに対して1950年,嫌気性消化法による屎尿の処理法がとり上げられ中小都市の屎尿処理法として,かかる衛生工学的方法による消化槽が各地に設けられるようになつた。埼玉県行田市に新設の屎尿消化槽は昭和29年11月に竣工したもので,この種のものとしてはその建設は比較的早期のものである。しかし,たとえばこれとほぼ同時期に開設された逗子市における試験結果を見るに,その寄生虫卵殺滅状態は必ずしも満足なものとはいえない(原田ら,1955)。そこで私は同消化槽について蛔虫卵を主とした寄生虫卵の消長に関して検査を行つてみた。検査の時期としては虫卵死滅率の最も低いと考えられる冬期を選び,試験は昭和30年11月から同31年3月までの時期に毎月1回づつこれを実施した。
行田市における屎尿消化槽は前述の如く,昭和29年11月竣工した2槽式のもので(第1図参照)1日平均約100石の処理能力を有する。長さ9.4m,巾2.0m,深2.0mの投入槽に運搬された屎尿は,量の計算,調整,夾雑物の除去等がまず行われ,ついで内経約10.0m,深約7mの第一消化槽に送られる。
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