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新殺虫剤パラチオン其他の中毒と豫防—本年直面する産業衞生上の新問題
上田 喜一
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1慶應義塾大學醫學部衞生學教室
pp.9-14
発行日 1952年6月15日
Published Date 1952/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201047
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食糧増産の國策に沿つて,稻の害虫螟虫を驅除することによつて約5%,即ち300萬石を浮かせようとして,今年の初夏から新しい殺虫劑を相當大規模に應用する方針が決定された。此のParathionは極めて強力な萬能殺虫劑ではあるが,又それだけに人畜に對しても猛毒であり,殊に有毒藥劑の取扱に對して科學的訓練を受けていない農民が,豫防具等を用いにくい暑い時期に使用するのであるから,日本全國にわたる大規模な中毒が續發する危險が豫想される。これを豫防する爲には公衆衞生の第一線に働く人々の十分な知識と細心の指導が必要であり,中毒が發生した後患者を死から救う爲には開業醫其他現場に最も近い臨床家の活動が何よりも大切なことになる。本誌の性質上ここには特に豫防の面について米國其他の經驗を紹介して現在一應確立されている科學的對策を知つていただこうと思う。
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