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受胎調節の普及實施要領の解説
齋藤 鐐一
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1厚生省公衆衞生局庶務課
pp.3-5
発行日 1952年3月15日
Published Date 1952/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201003
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1.方針
最近人工妊娠中絶は増加の傾向にあり,その母體の生命及び健康に及ぼす影響は,相當に考慮すべきものがあるので次のような方法により,公衆術生の見地から積極的に受胎調節の普及を行い,國民の福祉及び,資質の向上をはかるものとする。
敗戰による社會的經濟的混亂が,個人生活を極度に壓迫し,貧困化し,このことが社會の秩序を益々混亂させた。この個人生活の困窮化と,必然的に起り得る身體的な障害のために,優生保護法制定以來驚くべき勢で以て,人工妊娠中絶が増加して來た。日本の死産率は,戰前より漸減の傾向にあつたのであるが,昭和24年來,再び増加の傾向を示すに至つたのは,文明國家としておはずかしい有樣である。而も自然死産率は殆ど増加を示さす,死亡率の増加は,人工妊娠中絶の増加によるものと認められる。人工妊娠中絶は,母體の主命及び健康を保護するために,必要であることが,優生保護法によつて認められたけれども,人工妊娠中絶による母體への惡影響は,輕視出來ない状況である。妊娠しては身體のためにいけない母親が,受胎調節を知らないことは,恐るべき悲哀である。このような世の多くの母親が負擔しなければならなかつた影響を排除するために,受胎調節の普及を計ることは,公衆衞生上誠に妥當な方策であると考えられる。
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