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恙蟲病の疫學にかける最近の知見
佐々 學
1,2
1東大
2傳研所
pp.54-56
発行日 1951年8月15日
Published Date 1951/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200889
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恙虫病は廣く東南アジアに地方病として分布する急性發疹性の傳染病で,1種のリケッチアを病原とし,恙虫というグニにより傳播せられる。臨床的には發疹チフスに似た點が多いが,恙虫の刺交部に長い間壞死性の小丘疹が證明せられ,局所淋巴腺が腫脹する點に本病のまぎれもなき特徴が見出される。しかも患者を放置すれば40%に達する死亡率がみられる甚だ危險である。恙虫病が太古から實在したことは明かな事實で,河川の改修の進んだ今日とは比較にならぬ廣範な有毒地が旅人や農夫をおびやかしていたであろうことは想像に難くない。今日の日本においても,新潟,秋田,山形の3縣に數千町歩の肥沃な有毒地が草原として放棄され,毎夏凡そ100名の患者を發生させているが,これとても周邊の往民が有毒地えの立入を嚴に避けつゝあつての上での發病者であつて,本病の有毒地が近邊の農民にあたえる脅威の無氣味さは到底他の地方の人々には想像出來ぬものであろう。
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