醫藥隨想
意欲の發動と衞生教育
松岡 脩吉
pp.186
発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200810
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身体運動のために筋を活動させるのは,運動神經であるけれども,これはもちろん神經系の欲求に從つているのではない。ある状態における個体が身体運動を要求し,その實現が神經系を介して行われるだけのことである。活動に必要な糖の貯えが少くなつできたからこそ,神經系がはたらいて運動を起し,食物を求めこれをとり入れさすのである。公衆による公衆のための衞生實踐である公衆衞生も,これと全く同形なものとして考えてはいけないだろうか。
近代め公衆衞生活動は,いくたの科學の成果を基にした技術實踐であり,衛生技術者の行動を中心とするひろい有機的な活動ではあるが,この活動の背景には公衆の意欲がはたらいている。併しこの意欲は意識された形においてゞなく,單に滿されざる缺乏の状態として現われていることも多いであろう。この滿されざる状態をはつきり意識にのぼらせることは,衞生に關する調査研究とそれによる衞生教育の分擔する業務と考えられる。
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