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公衆衞生の發達(1)
杉 靖三郞
pp.181-182
発行日 1950年3月15日
Published Date 1950/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200609
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生命統計の始まり
疾病の流行を防ぎ公衆衞生を改良しようという試みには,古代の文明國においても行われていたのである。然しこれらの試みは基礎となるべき正確な知識(つまり,公衆衞生に關する調査・統計資料)が缺けていたので,充分な好い效果を現わすことが出來なかつた。かような調査資料を作ることは十七世紀のイギリス人,ウイリアム・ペテイWilliam Petty(1623-1687)によつて始めて試みられたのである。この人は醫者であり且つ發明家でもあつた,また,政策的經濟學の創始者とも呼ばれている人である。1662年は彼は一人の友人と協力して"死亡數に關する自然並びに政策上の觀察"(Natural and Political Observations upon the Bills ofMortality)と題する著作をあらわしたその當時の資料はごく貧弱なものであつたが彼はこの著作で人口,死亡率,疾病蔓延率などを推定しようと努力したのであつた。この仕事にたずさわつた結果,彼は資料の不完全を痛感し,正確な統計資料を得るため政府が施設並びに制度を設ける必要があると主張した。この著作のなかで,彼が"一國の眞の富は有能な人の力に求むべきこと"(the true Wealth of a country is to be sought in its efficient man power)と主張していることからもその優れた見識がうかゞわれる。
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