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いわれなきペシミズムといわれあるペシミズム
石垣 純二
pp.187
発行日 1950年11月15日
Published Date 1950/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200741
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『宮城縣のN村での話,前の日の働きづかれで行商人が,ある朝ゆつくり寢こんでいたら,病氣じやないかと氣をまわした宿の主人が村役場に注進して,衞生監視員が追取刀でかけつけた。もちろん,これはいゝ氣持のところを起された行商人が目をパチクリさせたゞけですんでしまつた。こんな有樣だから,まわりの町村からは傳染病が幾人も出たが,N村からは一人も出なかつた。いやそれどころではない。この村の牛小屋,馬小屋には一匹のハイもカもいない。だから牛馬がよく太り,よく仔を産むようになつたと村民は喜んでいる。この村が三年前までは,台所で鍋の蓋をとると,ブーンとハイが唸るほどだつたのだ。
山梨縣のM村での話,井戸端で一人の母親と近所の娘が立話をしている。「うちの子はネ先だつての檢査で標準體重より下つたでなあ,一ぺん保健婦さんに相談したいんだよ」「そうかね。じゃ今日わたしから報告して,來てもらおうか」「えゝお願いするわ」その娘は愛育班員といつて受持區域の四五十軒の子どもたちの健康は手にとるように知つている。この村で一番おくれているのはオヤジたちというわけで,目下父親教室が行われている。
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