總説
學校給食問題
齋藤 潔
1
1公衆衞生院
pp.3-7
発行日 1947年6月25日
Published Date 1947/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200141
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1.戰後の食糧事情
戰後に於て交戰國の食糧問題が大きな關心をもたれることは當然であるが,今次大戰後のように,その影響する所が廣く且つ深刻であることは,未だ曾てその例を見ない。その及ぶところは,唯に交戰緒國ばかりでなく,殆んど凡ての國々にまで波及してゐる現状である。實に戰禍の慘状を思はせるものがある。敗戰日本に於ては,民族の生死にも關する切實なる事實として,この問題がわれ等の生活にひしひしと迫つてゐる。而も,この情勢が獨力では如何ともなし得ない實際から見て,近い將來に解決の曙光さへも見出し得ないものと覺悟せねばならない。戰前でさへも食糧の國内生産は,その必要量を充たし得ず,外地からの輸入に俟つて,その不足を補つてゐたのであるから,今日の状態を見るのは異とするに足らないであらうが,この難關が突破されない限り,民族の再建も,丈化國家の建設も,いふべくしてその緒にだに就き得ないのは明かなことである。われ等は食の問題を今日ほど身にしみて切實に體驗したことはない。
國内で生産される食糧にせよ,また輸入食糧にせよ,食糧の必要量が充分にみたされている時代に於ては,食糧に就ては極めて無關心であつて,食生活の如きも長い間の習慣と惰性に引きづられ,食糧の消費が不合理に行はれていた。榮養學の教へる食糧の生産,及び消費の上の幾多の改革案も,また不合理な食生活に對する改善策も耳を傾けられずに過ぎ去つて,遂にこの難所を切り抜けねばならない破目に陥つている。
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