原著
食品中の微量成分(主として乳幼兒期食品)と調理に就て
中川 一郞
1
1公衆衞生院體力科學部小兒衞生研究室
pp.116-124
発行日 1946年11月25日
Published Date 1946/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200056
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食品中に含まれる微量成分,即ち無機質及びビタミンは成長と最も大きな關係をもつものであり,一方乳幼兒期は成長,發育の最も旺盛なる時期であるから,兩者の間に關聯の深かるべきは容易に想像される所である。物の豊富な時代に於ては極めて不經濟的であるにせよ,之等の微量成分を食餌以外の形で,例へば藥劑として別個に攝ることが許されたにしても,之等微量成分を得る爲には抽出,濃縮に莫大な資材と人手を要し,我國の現状に於ては斯かる手段によることは困難で,與へられた食餌中より,而も之を最も效果的に攝取利用しなければならない。
今日食餌はすべてが生食し得るものではなく,多くは程度の差こそあれ多少調理を行つて食するものであつて,此の間に食品中の榮養成分が何等變化を受けないとは云へない。微量成分,殊にビタミンの如きは極めて大きな變化を受けるものであり,場合によつては最初に存在したものが,實際口にする際には皆無となつてゐる場合も少くないのである。生材料中の含有量(勿論同一食品にても産地,種類,收穫期によつて含量を異にする)のみによつて攝取量を計算するが如きは誤りであるが,一方又調理,殊にビタミンの熱に壞され易いと云ふことのみを知つて徒に加熱を恐れるが如き(加熱によつて却つてビタミンの破壊を防ぎ得る場合が屡々ある)は何れも之等微量成分に對する正しい認識を缺くが爲の結果に外ならない。
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