視点
公衆衛生学に期待すること―医療におけるソーシャル・イノベーションの牽引役を
門田 守人
1
1公益財団法人がん研究会有明病院
pp.874-875
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102884
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先日,健康・医療戦略推進本部は,医療分野の研究開発予算を来年度から一元化する方針を決め,各省縦割りの予算を効率化して重点分野に配分し,応用につなげるとした.政策論議について素人である筆者には詳細はわからないものの,医療分野の研究開発が一元化されることは意義のあることと思う.これまでは,多くの政策が各省庁縦割りとなっており,必ずしも国全体が一丸となってある政策を推進している体制には思えなかったからだ.ぜひ素晴らしい成果が出せる方向で進んでほしいものである.しかし,その期待の一方で不安がないわけでもない.この推進本部そのものは,2013年6月に閣議決定された「健康・医療戦略」において創設が盛り込まれた,研究司令塔機能(日本版NIH)を担うためのもので,今回はその予算要求の基本方針が提示されたのである.
2012年6月,前政権下の医療イノベーション会議で「医療イノベーション5か年戦略」が取りまとめられていたが,第二次安倍内閣は,「世界に先駆けて超高齢化社会を迎えつつある我が国にあって,政府は,世界最先端の医療技術・サービスを実現し,健康寿命世界一を達成すると同時に,健康・医療分野に係る産業を戦略産業として育成し,我が国経済の成長に寄与することにより,我が国を課題解決先進国として,超高齢化社会を乗り越えるモデルを世界に拡げていかねばならない」として,2013年2月にこれまでの医療イノベーション推進室を廃止し,新しく健康・医療戦略室を設置した.そして,この5か年戦略を見直し,新たに取りまとめたのがこの「健康・医療戦略」である.
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