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■はじめに:雲南医療圏における新病院の役割
当病院は,島根県農業会が昭和23(1948)年に設置し,開院以来運営主体の変遷を経て,平成23(2011)年4月に雲南市立病院(以下,市立病院)として新たなスタートを切っている.新病院の整備工事においては,平成27(2015)年9月の着工から新築・改修・解体など4年の歳月を経て,平成31(2019)年9月にグランドオープンし,新たな施設で運営を開始している(図1).
開院以来これまで,市立病院は雲南医療の中核病院として,市民の生命と健康を守るため,その役割を担ってきた.市立病院の病床数は,雲南医療圏の約5割を占め,雲南医療圏におけるその存在意義は極めて大きいものとなっている.
自治体病院は,地域の公的な基幹病院として,小児・周産期医療,救急医療などの不採算部門や,がん治療などの高度な医療,医療過疎地である山間へき地・離島における地域医療を担うなど,民間では採算性確保の上で困難な医療を担っている.また,近年の医師の専門医志向,都市志向や勤務医の過酷な勤務体制,大学医局の医師派遣機能の低下などによる医師不足に伴い,診療体制の縮小を余儀なくされるなど,その経営環境や医療提供体制の維持が極めて厳しくなっている.
雲南医療圏においても,医師をはじめとする医療スタッフの不足が大きな問題となっている.地域住民の生命と健康を守るため,また医療サービスの給付が雲南医療圏からなくなることがないよう,自治体病院としてその役割を果たさなければならない.県内の病院においては,救急告示の取り下げや,産科医師の不足による分娩制限事例など,医療を取り巻く環境は極めて厳しい状況となっている.
こうした状況の下,市立病院の整備に当たっては,小児・周産期医療,二次救急医療の機能を維持し守り続けるため,必要とされる整備の充実を図るとともに,安定的かつ自立的な経営の下で良質な医療の提供を目指している.
新病院の整備では「永続的に医療提供が可能な構成」「限られた医療資源を最大限に活かす病院」「公立病院として経済的で効率の良い施設」を主な方針として事業が進められた.
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