特集 歯科口腔保健を巡る話題
子どもへの虐待と歯科
森岡 俊介
1,2
1森岡歯科医院
2前板橋区要保護児童対策地域協議会
pp.131-135
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102662
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はじめに
わが国では寿命の延伸により高齢者が増えてきているが,高齢者を支え,次世代を担う子どもの出生数は毎年減少しており,平成23(2011)年度には出生数が105万人強で過去最少となったことが厚生労働省人口動態統計で報告されている.その一方で,子どもの虐待に対応した児童相談所での対応件数は年々増加し,厚生労働省によれば,平成2(1990)年度には1,101件であったものが,10年後の平成12(2000)年には17,725件,さらに11年後の平成23年度には過去最高の59,862件となっている(図1).このために,出生数に対しての虐待相談件数割合が,平成23年度には平成2年度の60倍を超えている.
このように,少子化が進む中で子どもの虐待が増加していく背景としては,地域の崩壊による近隣との関係の変化,家族の中での夫婦・親子関係の変化や,長期の経済不況により生じた貧困など,様々な要因があると考えられる.
ところで,歯科医師は,母親が妊娠する前から乳幼児期さらには子どもが成人していくまで,生涯を通じた「かかりつけ歯科医」として子育てに関われる立場にある.そこで,次世代を担う子どもたちが,健やかに育つ環境づくりのための歯科の役割は,被虐児の口腔内状況を子どもの虐待に関わる職種に知ってもらうことと,歯科関係者が,子どもの虐待に関する知識と現状をよく理解し,歯科口腔保健の専門職として子どもの虐待と関わる行政や他職種との連携を図ることであると考える.
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