特集 高齢者の身近な疾患
高齢者の泌尿器科疾患
後藤 百万
1
1名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学
pp.365-369
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102414
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はじめに
下部尿路症状(Lower Urinary Tract Symptoms:以下LUTS)は,下部尿路(膀胱・尿道)機能障害によって引き起こされる種々の症状であるが,本邦の疫学調査では60歳以上の78%が何らかのLUTSを有することが示されている1).下部尿路機能障害は直接生命に関わることは稀であるが,生活の質を阻害し,特に高齢者では本人のみならず,介護者のQOL(quarity of life)も障害することがある.
また,虚弱高齢者においては不適切な排尿管理が,寝たきり状態や認知症の誘発につながることが少なくない.超高齢化社会を迎え,高齢者の介護予防やQOLの向上に社会的関心が高まっているわが国において,高齢者における下部尿路機能障害の診療やケアは,ますます重要となっている.頻尿,尿失禁などの蓄尿症状は,下部尿路症状のなかでも,生活の質(QOL)を障害し,困窮度の高い症状である1).
他方,下部尿路症状の病態は多岐にわたり,また高齢者では多くの病因が複合して存在することも少なくないため,適切な治療を行うためには,病態を正確に診断することが重要となる.
本稿では,高齢者における下部尿路症状について,頻尿,尿失禁を中心に述べる.
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