沈思黙考
世界の生活習慣病対策
林 謙治
1
1国立保健医療科学院
pp.129
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102351
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21世紀の公衆衛生の強化目標について,世界公衆衛生研究所会議は2004年に「平時の生活習慣病対策,非常時の健康危機管理」を定め世界に発信した.この方向に向けた努力は現在まさに強く意識されるようになったが,内容面においてさらに充実化していかなければならないことは言うまでもない.健康危機管理と対をなすもう一方の生活習慣病対策について,国際的に最近大きな動きがあった.
昨(2011)年9月国連総会において生活習慣病を重要なGlobal Issueとしてとらえ,国連政策のPriority Areaであることを決議した.健康問題がWHOを超えて国連総会の場で決議されることは珍しい.ここまで持って来られた主な理由は2つある.1つは生活習慣病による死亡は世界レベルにおいてすでに全死亡の60%を超えており,もはや先進国だけの問題でなくなっていることである.これによる平均寿命以前の早期死亡は多大な労働力を喪失させ,経済成長の阻害要因となっていると認識されたからである.第2に,生活習慣病は日常生活行動に起因するが,個人の自覚や保健指導だけでは簡単に予防することはできない.そのためにはヘルス・セクターを超えた全セクターの協調,あらゆる産業の協力(食品,交通,流通等)や官民一体化の努力が求められるため,国連総会としての決議がなされた必然的な理由があったと思われる.
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