映画の時間
―中国,1960年.文革前の封印された悲劇.―無言歌
桜山 豊夫
pp.855
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102272
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第二次世界大戦終結後,中国では国民党と共産党の内戦が起こり,1949年に共産党が勝利して中華人民共和国が成立します.1956年には毛沢東が「百花斉放・百家争鳴」を提唱し,共産党政権への批判も含め自由な発言を許しました.しかし1957年になると一転して,批判的発言をした知識人を「右派分子」として,大規模な粛清を行いました.これがいわゆる「反右派闘争」と呼ばれる政治闘争です.右派と名指しされた知識人たちは「労働改造」と呼ばれる意識改革のためのキャンプ(農場)に送り込まれます.今月ご紹介する「無言歌(むごんか)」は,この時代を描く,ワン・ビン監督の力作です.
1960年の中国西部.右派の知識人たちが収容所の前に集められている場面から映画は始まります.収容所,といっても建物らしいものはなく,一面の荒野,というか砂漠の中といった感じです.その荒野に壕が掘られており,彼らはいくつかの壕に割り振られていきます.
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