沈思黙考
精神医療の変遷
林 謙治
1
1国立保健医療科学院
pp.750
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102245
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人は体調が悪くても軽度で済めばあまり気にしない.しかし,症状がある程度重ければ人は医療を求め,そして適切な治療法に出会ったときにやっと安心する.ところが病名すら診断がつかないとなると,医師は治療方針が定まらず,患者はあせりを感じる.その間,医師は取りあえず対症療法を続け,経過を見ながら病名を模索する一方,自然治癒に期待をかける.多くの難病患者は「診断名にたどり着くまで長い期間かかったことが何よりも精神的に負担であった」と訴えている.医師も患者も,診断は治療への第一歩と認識しているからである.
近代医療は,主観的な訴えに結びつく客観的臨床所見を含む生物的・生化学的根拠を求めて進歩してきた.主観的な訴えは測定が難しいため,現代では生物的・生化学的根拠にますます依存するようになり,パソコン場面ばかりに向かう医師の姿が目立つようなった.しかしながら,生化学的測定値にしても,正常と異常の間のカットオフ・ポイントを決めるのはやはり簡単ではない.メタボ検診に見るように,HbA1Cのカットオフ・ポイントの設定によっては,要指導の対象者が大幅に違ってくる.
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