特集 ヒトと家畜・ペット・野生動物の感染症―口蹄疫から学ぶ
E型肝炎
石井 孝司
1
,
李 天成
1
1国立感染症研究所ウイルス第二部
pp.43-46
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102000
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歴史とウイルスの性状
1955年,インドのニューデリーで飲料水を介した大規模な急性肝炎が発生し,黄疸性肝炎と診断された症例だけでも29,000人に及んだ.これがE型肝炎に関する最初の学術的記述である1).1983年のBalayanによるボランティア実験により,この非A非B型肝炎が糞口感染により伝播することが証明され,また患者の糞便中には直径27~30nmのエンベロープを持たない小型の球形ウイルス粒子が観察された2,3).1990年にReyesらは感染サルの便と胆汁からcDNAのクローニングに成功し,このウイルスをE型肝炎ウイルス(hepatitis E virus:HEV)と命名した4).
HEVは小型球形のウイルスであり,その粒子の直径は約30nmである(図1).HEVのゲノムは約7.2Kbのプラス一本鎖RNAで5’末端にはcap構造が,3’末端にはポリアデニル酸が付加されている.HEVの遺伝子上には3つのopen reading flame(ORF1,ORF3およびORF2)が5’末端から一部重複しながら配列している5).約5,000塩基のORF1は非構造蛋白をコードし,ORF2は72kDaの構造蛋白をコードする.ORF3はORF1とORF2の間に位置する(図2).多くの株が解析され,HEVには少なくとも4つの遺伝子型(Genotype)が存在することが明らかになっている(図3).HEVは2004年にヘペウイルス科(Hepeviridae),ヘペウイルス属(Hepevirus)に分類された6).
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